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2013年8月 1日 (木)

ラジコン飛行機の力学その1 揚力

バルサ零は急反転し子煩悩なSMD氏に危うく激突するところを見事自爆して潔くちったが、数々の尊い犠牲の上に、ようやく零戦を何とか飛ばす目処が付いてきた。
そこで今回は性悪女並みに怪しげな魅力を振りまくスケール機に、すげなく足蹴にされずにお近づきになる方法をへたっぴなりに調べてみた。
結論から言うと失速に注意しながら機体に無理が掛からないように離陸して同じように注意して着陸するという何の変哲もない当たり前のことである。
まあ、わかっている人にとって当たり前のことばかりだが自分のようなトホホものは何回痛い目にあってもなかなか学習できないのである。
腕前の方は急激にうまくなるような才能は持ち合わせていないので、模型なりの航空力学でも勉強して腕前を補うようにしよう。
空中に浮かぶものは地べたの束縛が当たり前の確固たる基準の上で暮らしている地上族にとって理解しがたいところがある。
理論を知らなくてもなんとなく飛ばせないことはないが、飛行機の場合は最低限のことを知らないと無知ゆえに墜落ということもあり得る。
アシアナの墜落を初め操作を誤って墜落した例は枚挙にいとまがない。
もっとも高度による飛行方法の制限などは模型では機にする必要がまず無いので模型の失速に関する基本的な事柄を中心に整理してみよう。
そのあとでより実践的な方法について述べることにしよう(多分)。


揚力
スケール機はただでさえ、スケール効果により揚力よりも抗力の働きが強く出るため揚力が不足しがちになるようである。その上どこかのゼロ戦のように^^;何度も墜落と修理を繰り返していると重量が増えがちである。さらに温度や湿度が上がると空気密度が下がり(水の分子量は小さい)得られる揚力はさらに小さくなる。
揚力は、空気密度と有効な翼面積と揚力係数に比例し、速度の二乗に比例する。揚力係数は、失速角のあたりまではほぼ迎角に比例する。したがって揚力は失速角までは迎角にほぼ比例すると考えて良い(ただし迎角が0度のときに揚力係数が0よりも上回る場合が多い)。
このほかにプロペラの推力が働いている。定常状態ではプロペラの推力は単純に機体の抗力とバランスすると考えれば良いが上昇下降も含めて加速状態のときには、バランスからはみ出た分が上昇や加速に使われると考えれば良い。極端な話、推力が自重以上ある場合は、姿勢の制御が出来れば翼の揚力に頼らずに上昇できる。
通常の飛行機は翼の揚力が抗力よりはるかに小さいおかげで自重よりもずっと小さい力=抗力で空中に浮かぶことが出来るが、最近の模型の場合はヘリのように自重以上の推力を得るのはそれほど難しくは無い。
普通はプロペラの向きは機体に対して固定されているので推力を揚力を減らすことに使うのは、機体の向きを上向きにしないといけないが、失速は迎角の問題なのであわや失速というときにパワーで引っ張り上げるという手はありだろう。3Dフライト機は、ホバリングまでできるが、大気速度0で舵を効かすためにはヘリのようにジャイロ効果を使えないからプロペラ後流で舵が効くようにエルロンが翼根まであるかエレベーターを左右別々にコントロールする必要がある。
空気の密度や翼の有効な面積は簡単には変えられないから、揚力を増やすには、速度か迎角を増やすのが一般的である。面積は長さの二乗なので重量は体積に比例すると考えると長さの3乗に比例するので、結局忠実に縮尺したスケール機では、速度も比例で縮尺すると重さは3乗根で小さくなるが、揚力は揚力係数が変わらないとしても翼面積=二乗、速度の二乗=二乗なので結局揚力は4乗根で小さくなる。したがってスケール速度では浮かぶことは不可能である。これを式にして解くと1/rに縮小した時には速度は1/sqrt(r)  (swrtは平方根)にしなければいけない。たとえば1/4に縮小した場合は sqrt(4)=2 なので速度は1/2にしなければならない。1/10のスケールで離陸速度160km/hの場合、スケール通りだと16km/hで離陸だが、スケール効果によりsqrt(10)=3.162…倍の50.6km/hで離陸しなければならないということである。
実際には揚力係数も、スケールが小さくなるとレイノルズ数の減少により減る場合も多く、また失速角も若干小さくなるのが普通であり条件はさらに悪くなる。
揚力は式で表わすと以下のようになる
L=1/2*ρ*S*v^2*Cl (L:揚力、ρ:空気密度、S:有効翼面積、v:速度(対気速度)、Cl:揚力係数)
この中で、空気密度は気圧と温度によって変化し湿度の影響も多少受けるが、0℃ 1atm=1013.25hPaの乾燥空気で1.293kg/m^3であり、模型の場合は、それほど高く上がるわけではないので約20℃の時の1.2kg/m^3としておいても他の誤差から比べると十分使える値である。気になる場合は、理想気体の密度は圧力に比例し絶対温度に反比例することを利用すれば模型の環境程度では十分な精度が得られる。湿度の影響の計算は少しややこしいが20℃の時の湿度0%と100%では100%の時の方が0.87%ほど軽くなる程度で無視した方が良い。
有効翼面積という言い方は怪しい言い方で通常は代表面積といい、流れにす直な面への投影面積とされており、翼の場合は翼面積である。わざわざ有効翼面積と言っているのは、揚力は胴体でも発生するし、翼の端では揚力が発生が抑えられるからである。とはいえこれも通常は単純に翼面積と考えて単純にそうでない場合もあるという程度に考えれば良い。
速度は空気との相対速度である。風がある場合は風の分を考慮し、進行方向が上や下など斜めの場合はその向きで計る速度である。この進行方向を考慮する必要性は、迎角を測る時にはより一層重要である。
揚力係数は計算で求めるのは大変なことで普通は実験で求める。計算も実験で裏打ちされて初めて有効な計算方法とされる。
幸い揚力係数は、実験結果がたくさんネットにも公表されているが、残念ながら日本語のわかりやすいサイトを知らない。また模型用で必要な低いレイノズル数でのデータが載っているサイトも多くないようだ(?)。


Airfoiltools

調べた中で翼形が豊富で比較的低いレイノルズ数領域のデータが載っているサイトを以下に示す

このページの左側で翼形状の名称を選び、翼の形状のリストが出たらそのページの右側で Airfoil detailsを選べば詳しいデータが出る。各レイノルズ別の揚力係数なども出る。
英語のページなのでわかる範囲で簡単に説明する。
たとえばCLARK Yというどこかで聞いたことのある有名な翼形を出して見る。(別になんでもいいが)

Airfoiltools2

たとえばトップページの左のAirfoils A to Z でC を選びたくさん表示された翼形の中の一番下にある (clarky-il) CLARK Y AIRFOIL の右端の文字の塊の一番上の Airfoil datails をクリックする。

Airfoiltools3

すると上の方に翼形が赤で翼の中心線が茶色で表示されている。翼形は大きさに関係なくレイノルズ数というものに関係するので、翼の形状のデータは翼弦方向の全長を1とする割合で上側と下側に分かれて表示されている。
その下の Similar airfoils という項目は似たような形状を持つ翼形の表示とリンクである。(これを見ても作った人の奇特度が良くわかる!)

Airfoiltools4

そしてさらにその下のPalars for 翼型名 がこの翼形のグラフデータである。
Plotというチェックを入れられる項目があるが、これはレイノルズ数別のデータでチェックを入れたレイノルズ数のデータのグラフのみ表示できる。また右端のDetailsをクリックすればグラフの他に個別の数値を記載したページが現れる。

記号は次の通り
Cl:揚力係数、Cd:抗力係数、alpha:迎角(deg)、Cm:縦揺れモーメント係数 
翼形を調べる上で重要なデータがグラフ化されている。抗力係数も縦揺れモーメント係数も抗力や縦揺れモーメントを求める式は揚力と同じで揚力係数を各係数に置き換えるだけである。
これは、揚力も抗力も縦揺れモーメントも実は翼に発生する力を別々の側面から見たことに過ぎないからである。
物体に働く力は物体が固くて変形を考えなくて良ければ、すべて向きを持った力(ベクトル量)と、偶力(モーメント)に置き換えることが出来る。翼の場合実際に働くのは翼の各部分に働くこれらの力を翼全体で合わせた(積分した)ものになる。揚力と抗力は翼に働く力のベクトルを計算や考えるのに都合の良い流れに垂直な方向と平行な方向に分解しただけである。
抗力は流れに平行に働く力で、迷うことは無いだろうが、縦揺れモーメント係数は翼の前縁を基準とした翼に発生するモーメントである。これは飛行機の縦の(上下の)安定性に大きく関係する。翼は普通上向きに揚力が発生するがこの場合に縦のモーメントはマイナスの向きに取るように習慣化されている。
Cl/Cdというグラフだけは迎角によらない縦軸に揚力係数、横軸に抗力係数を取った揚抗比のグラフである。抗力が小さくて揚力が大きいほど少ない力で浮かぶことが出来るのでこの比が大きい迎角で飛ぶことが一番効率が良くなる。
この最大値は、原点(Cl,Cd共に0となる位置)からその時のレイノルズ数のグラフへ接線を引けばその傾きが最大の揚抗比になる。
クラークYでレイノルズ数500,000の場合は、Cl=0.809,Cd=0.0082、迎角=3.75度で揚抗比は98.66で重量の98.66分の1の推力で空中に浮かぶことが出来る。
ところがレイノルズ数50,000の場合は、Cl=1.2442,Cd=0.04201、迎角=9.25度で揚抗比は29.62になる。
ちなみに失速角はレイノルズ数500,000場合は13.5度、50,000の場合は13度で50,000の場合の最大揚抗比はより失速角度に近い。


レイノルズ数
さてレイノズル数という言葉を説明も無しにたくさん使ってきた。レイノルズというのはレイノルズ数を発見したイギリスのちょっとカッコイイおじさん名であるが、先に式だけ見せられるとこのおじさんを嫌いになるかも知れないが、この数が非常に役に立つことを知っていれば多少は好人物に思えるだろう。
さて先に大きさの大小を単純にそのまま力や運動の大小にあてはめてはいけないというスケール効果について説明したが、流体に働くややっこしい力には、レイノルズ数という大きさと力と運動に関した関したしっかりとした関係式がある。レイノルズ数が等しければ異なる条件の場合でも動的に相似として扱うことができるので、適当な大きさの模型をレイノルズ数別に実験することで異なる大きさや流速の状態のものに適用できるようになる。
翼の場合のレイノルズ数は次の式で表わされる。

レイノルズ数 Re = ρVL/μ = vL/ν
v:平均速度、L:代表長さ(翼の弦長など)、ν:流体の動粘性係数、ρ:流体の密度、μ:流体の粘性係数 = ρν

密度や静粘性係数でなく動粘性係数を使う方が多いようだが、式自体は同じことである。
模型では、空気の粘性は当然同じなので、速度と大きさの積が人が乗れるものと異なってくる。
代表長さは、平均翼弦長を取るのが普通である。このレイノルズ数が同じであれば、翼に働く力のベクトルもモーメントも同じ係数が使用できる。
レイノルズ数は層流と乱流の境を表わす臨界レイノルズ数は2310と細かい数字であるが、普通の翼に働く力を考えれば多少の違いの影響は無視できるアバウトなものと思った方が良い。
レイノルズ数が小さくなると揚力より抗力の影響が強く出る。
以下のページには蚊よりも小さい翼についてまで調べている数少ない低レイノルズ数の世界の説明がある
模型サイズについての言及もあるので見ることを勧める。


レイノルズ数を計算するときは単位を揃えるように注意する。
たとえば空気の1気圧の動粘性係数は15.01e-6 m^2/sであり、ほとんどの場合0.000015m^2/sとして計算すれば十分だが、単位のメートル二乗毎秒に注意し、速度はメートル毎秒、長さはメートルなどのように計算した結果が単位の消える無次元数にならなければいけない。


流体の理論的解析
物体の運動はニュートンの運動方程式で光速が問題になるような状況でない限り非常によく解析できる。
流体の運動もこれの応用でナビエ・ストークス方程式と呼ばれるものでよく解析できる(らしい)。翼に働く力もこれでばっちり解くことが出来る。
ただし、一つ問題があって、この式を解くことが滅茶苦茶大変というよりまず解くことが出来ないらしい。
そこでコンピューターの力で近似解を求めるのであるが、これも条件を絞って、また現実的に計算可能なように工夫しなければならない。
くどいようだが、もとはニュートンの運動方程式で、F=mαとは何とかのエネルギー保存の法則とかのその程度の話である。しかし、それを流体のような、くねくね曲がるようなものに適用すると途端にややこしくなる。
だれか、飛行機や翼の形状を入力したら、ぺぺっとそれに働く力を適当なパラメーターで導き出してくれるソフトを作ってくれないだろうか? むずかしいこと抜きで


ナビエ・ストークス方程式の簡単??な説明


続き

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コメント

X-FOILというソフトがありますよ。
飛行機や翼の形状を入力したら、それに働く力を適当なパラメーターで導き出してくれます。
ただし、「ぺぺっと」というわけにはいきませんが(笑)

Uコン復活さん。
X-FOILは難し過ぎて、だれか猿でも、毛が3本以上足りなくてもわかる、これであなたも今夜からX-FOIL使いだとかいうような解説が出ない限り、食指が動きませんが、「Uコン」には、グッときました。
思えば半世紀近く前、ゴム動力の飛行機から、いきなりUコンの飛行機を作って、機体はできたけど、エンジンの音と指が痛いので挫折。
おもちゃの錘でバランス取ってくるくる回るので妥協。
いまだにUコンの呪縛から逃れられない。
Uコン復活さん、まさかあの刈にエンジンが順調に回ってものどかとはほど遠いあれをやられるのですか?
すごい

ブログのアドレス添付させていただきました。
是非、訪れてコメントいただければ幸いです。
ちなみに、かなり、理屈っぽいので申し訳ありません。
一応、プロフィール蘭にブログの運営方針を記載していますので、一読していただければ幸いです。
X-FOILですが、それなりに電算機技術に長けていないと扱うのは難しいと思います。
なにせ、「流体」なんて難しい自然現象を扱うんで、ある程度は仕方ないかと。
そうそう、RCシミュレーションソフトでしたら、実感しやすいし、練習にもなりますよ。
飛行機の性能設定や翼型も指定できるものもあります。
これだと、墜落させても実害ないし、損もしない、思い切り飛ばせます。
ただ、残念ながらUコン用のシミュレーターはありませんげど(笑)
あと、プラモデルの飛行機に紐をつけて、「これでUコンだ」なんて、子供のころ楽しみましたよ。

ブログの他のページ読みました。
充分にRCライフを楽しんでいらっしゃる方にRCシミュレータなんてオススメして恥ずかしい限りです。
すみません。

はじめまして。鳥ガールと言う小説の中に、工学科1年の女の子が、ソフトで人力飛行機の設計図を描くシーンがありました。入学したばかりの女の子でも翼系の設計が出来る様になったって凄いですね。小説中でもソフトの紹介もされていましたし、確認したところ、実在のものでした。(スマン、名前わすれた)
人力飛行機、フリーソフトで検索出来たと思います。それこそ、グラフ用紙に図面書いてぺぺと入力すると気流の流れがグラフィックで表示される優れものです。

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