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2013年10月28日 (月)

ラジコン飛行機の力学その2 縦の安定性

飛行機がくるくる回りながら墜落するようなことなく、安定して飛ぶためにはどうなっていれば良いのか?
これは別に飛行機に限らずすべての物体の安定条件と同じである。
すなわち、力が釣合っていれば良い
ただし地べたの上では、地面が支えてくれるが、空気の上では、押せば空気は時間とともに逃げて行く。
逃げて行くままにしておけば墜落への道をたどることになる。

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飛行機は、巧妙な仕組みで空気を押すことによって生じる揚力や抗力などの力とプロペラなどの推力と重力の力と釣り合っている。これを考えてみよう。
釣合は飛行機にかかる全ての力の方向で考えなければならないが、3次元では、たとえば直交座標のx、y、z方向の直進系の力と、x軸、y軸、z軸周りの回転系の力の合計で6個の成分を考えなければならない。(都合によっては直交座標でなく、進行方向を基準にした座標や極座標など適当なので考えれば良いが、6の自由度が減るわけではない)
実際問題として、6の自由度というのはいささか複雑なので(実際にはいささかなんて程度とは次元が異なるほどの複雑さだが)まずは一番気をつけなければいけない縦の安定性と呼ばれる上下方向の釣合を考える。
この場合、飛行機の運動は、進行方向と上下の回転だけを考えれば良い。(進行方向は2次元なので2つの成分に分かれるので合計3個である)
物体の運動は、剛体と考え、重心の直進運動(並進運動)と重心周りの回転運動の二つに分けて考えると簡単になる。
また重心は、いくつかのブロックに分解して考えて、後でそれを合計しても構わない。
こうすることで、実際は複雑な縦の安定性の問題も十分役に立つ程度の解析が出来るようになる。


直進運動の方は簡単である。
飛行機に通常掛かる力は、翼による揚力と抗力、プロペラなどによる推進力、重力が主なものである。
これらの和が0になれば安定しており、0にならなければ加速度が発生する。F=mα で表わせる力は質量と加速度の積であるという、全ての運動の基本となる簡単な式そのものである。
平面内の運動なので、時間とともに進行の向きが変わるかもしれないが、各、力を時間の関数にできれば、微分と積分を使って簡単に位置を求めることが出来る。2次元なので、この関数を具体化出来れば、近似解を解くのもパソコンのエクセル程度でも簡単にできる。(もっとも関数の具体化するためには相当条件を吟味しなければならない)

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回転は回転モーメントという梃子の原理の応用で計算できる。すなわち、ある位置のモーメントは力と力の掛かる位置までの距離の積である。
剛体が釣合っているときは、モーメントの和はどこで測っても0である。(図で計算すれば理解できる)



以上を基礎知識に飛行機に掛かる安定性の問題を考えてみよう
ここでのポイントは揚力は失速角以下の場合迎角によってほぼ直線的に比例するということである。通常は、迎角が0でも揚力が発生するようにしておけば、飛んでいる時の機体を水平に出来るので、機体の空気抵抗を最小にできる。従って迎角が0でも揚力が発生するような翼形を前もって適当な角度で点ける場合がほとんどなので迎角が0でも揚力は0でなく、いわばオフセットのある比例関係に近い。
揚力の大部分は主翼で発生するので尾翼は考えずに主翼だけで考えてみる。
揚力の働く中心を風圧中心と呼ぶ場合が多いが、ここでは単に揚力の中心と呼ぶことにする。(単に趣味の問題である)


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揚力の中心より前に重心がある場合を考える。もちろん揚力と重心がずれているのでもちろんこれだけでは、モーメントが0にならないので、他の何らかの力で(ほとんどの場合尾翼だが)釣合が取れているはずでアr。
ここで仮に風の乱れや、手の震えなど何らかの原因で機種が上を向いたとする。
すると、迎角が増大するので揚力も大きくなり、揚力の中心が重心よりも上になろうとする。揚力の中心は重心よりも後ろなので結局後ろが上がることになり迎角は減少し、元の迎角に戻ろうとする。逆に下を向いたときは、今度は揚力が小さくなるので後ろが下がり迎角が大きくなり元の迎角に戻ろうとする。
結局、上下どちらにずれようと、機種は元の角度に戻ろうとする力が働く。
逆に重心が余力の中心の後ろにある場合には、この逆で機種が一旦上を向けばどんどん機首が上がっていき、実際には失速角まで上がって失速に入る。
機種が下を向けば真下を向くまで機種を下げようとする。これでは、水平尾翼が付いていても機体の動きに負けないくらい早く動かさないと墜落せずに飛ばすのは不可能である。
これが、良くいわれる重心は必ず揚力の中心よりも前になければならないと言われる理由である。


Photo_4

この場合、水平尾翼は下向きの揚力でなければ釣合の条件が満たされない。実際の水平尾翼はそれほど下向きになっているようには見えないが、これは主翼の後方にあり、主翼の吹き下ろしの影響を受けるからである。主翼は大きな揚力を出しているため、その上下を流れる空気は斜め下に向きを変えられる。そのため水平尾翼に当たる風は上からの吹き下ろしになり下向きの迎角を付けた効果を受けるのである。


重心が揚力の中心より前にあると機体の縦の姿勢が乱れても自動的に安定する働きがあることになる。この安定性を特に静的安定性と呼ぶ場合がある。静的があるなら動的安定性もある。これは姿勢が乱れた時にどのように安定するか時間的な安定具合を示すもので、静的安定性があっても、姿勢が乱れた時の安定性にいくつかの特徴的な安定方法に分けられる。
元の姿勢に戻っていく場合、元に戻る力が強すぎると元の位置を一旦超えて行き過ぎてしまう場合がある。この場合、スーッと収束しないで行ったり来たりを繰り返して振動しながら元の位置に収束する。元の位置に戻る力がさらに強過ぎると、行き過ぎがひどくなり、元の位置を超えて振動する。元の位置を超えるということはどんどん振れ幅が大きくなり元の位置に収束することは無く発散する。
できれば素早くスーッと収束してくれるのが良いのだろうが、発散する場合もゆっくり振動しながらの発散の場合は、まだ人間の手でコントロールできる。人間が発散を抑える操作をすれば良いだけのことである。


重心が主翼の揚力の中心より前に無ければいけないという考えは、あまりにも当たり前のように言われていて航空力学の教科書にも当然のように書かれている場合が多いが、釣合のために尾翼には負の揚力が必要になり、いくら重心との距離が長いため小さな値であるとは、いえそうそう簡単にこの方法しかないと決めつけてはいけない。

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尾翼にも揚力があるのだから、図のような場合でも釣合が取れる場合があるのは、少なくとも力の向きだけを考えれば明白である。
問題は、静安定性があるかということである。これも、尾翼の揚力係数が充分に大きければ可能である。主翼の揚力増減による重心回りのモーメントより水平尾翼の揚力のそれが大きければ良いだけのことである。
実際にハンドランチの模型では大きな水平尾翼を採用し、この揚力尾翼式と呼ばれる方法が実用化されているらしい。ただし、ハンドランチと言ってもエルフのようなラジコンではない。


重心が前の方が良い利点としてはいくつかあるが、ひとつは重心が後ろの方にあると直進の左右の安定性も悪くなる点である。左右の安定性は、翼の上反角や後退角の影響も受けるのでより複雑であるが、基本は縦の安定性と同じく揚力の問題と考えても良い。ただし、揚力と言っても胴体を翼(変な格好の翼であるが)と垂直尾翼の揚力であるが、普通は風見鶏の効果と言った方がわかりやすいだろう。
風圧の中心が風見鶏の支点より前にあれば、風見鶏は尻尾を風上に向けることになる。したがって風見鶏は横方向に風を受ける中心は支点よりも尻尾側になければいけない。そうでない場合、風見鶏は尻尾の向きを逆にするように絵を描き変えれば済むかもしれないが、飛行機の場合は墜落こそすれまったく飛ぶことができなくなる。したがって垂直尾翼を大きくするなどして対処する必要があるが、大きなス著く尾翼は抗力の点で不利である。
もう一つの理由は、翼は揚力だけでなく抗力も発生するが、主翼による風の変化の影響をもろに受ける尻尾の方に大きな翼をもうけることは、ややこしい問題を巻き起こすからであろう。


主翼は、揚力を効率良く得るために上側に凸に上下非対称の場合が一般的である。
このとき、翼形の時に説明したように、迎角が大きくなるにつれ、空気は後縁側での揚力の効果が薄れ揚力中心が前縁側に移動する。迎角を大きくして揚力を大きくする必要があるのは、定速航行時は、速度が遅くなる時であるが、このときでももちろん縦の安定性が無ければ飛行機は墜落するしかないので重心はこのときでも充分安定する位置になければいけない。重心が主翼と尾翼の間にある場合は、この影響が深刻である。速度が落ちた場合は揚力を確保するために迎角を増やす必要ががあるが、主翼も水平尾翼も揚力の中心が前に移動するのに重心は変わらないから、尾翼に必要とされる揚力傾斜や失速角の上限はますます厳しくなる。
重心が主翼の揚力中心よりも充分に前にある場合は、水平尾翼に必要な揚力の傾斜は主翼の迎角を基準にすれば負の領域からの揚力傾斜で済むので楽である。エレベーターをちょっと上げてやって吊り合わせれば良い。
ただしエレベーターの効きが充分である範囲内に重心を抑えておかないとエレベーターのコントロール不能になったり、効きが悪くて操縦性が悪くなる。


揚力の中心はその翼の周りで発生する空気の圧力の和なので(式で表せば空気の圧力を翼周りで積分した値ということで簡単である)それらのモーメントの和も0になる位置だが、迎角により位置が移動するので実際に計算するうえで面倒である。迎角が増えれば揚力が増え、位置も前に移動するので、ある適当な位置を考えれば、迎角の変化によってもモーメントはほとんど変わらない位置がありそうである。
実際にそういう位置は存在し、なぜか翼形に関わらず翼弦の前からは勝手25%の位置にあると言われている。この位置を空力中心と呼んでいる。
したがってこの位置を基準に重心を決めれば迎角の変化に関わらず水平尾翼で必要なモーメントは常に一定になるので計算はある意味楽である。
しかし、揚力は速度の二乗に比例するので速度が遅くなって迎角を増やしても速度が減る分揚力は大きく減るので実際の重心は空力中心よりも後ろにすることが多いようだ。


今まで揚力を主翼と尾翼に分けて考えて来たが、これはそうしないと安定させることが不可能なので当然なのだが、それでは、無尾翼機はどうなのかということに触れておかなければならない。
無尾翼機では主翼の揚力を前縁側と後縁側に分けて考えて、後縁側では負の揚力を発生させると考えれば良い。もしくは後退翼の翼端でねじ利下げを行い負の揚力を発生させると考えてもいい。
またはカナードというユーロタイフーンやスホーイなどについている前側にある水平尾翼=先尾翼(前にあるにもかかわらず尻尾と呼んでいるのは妙なことだが)を使う。(先尾翼は単に無尾翼機の操縦性の悪さを補うためという考え方もある)
いずれにしろ、実機では翼の全面で揚力を上向きに発生させて安定させるという考えはしないようである。



さて飛行機は上下にだけ飛ぶわけでないので左右の安定性も必要である。左右もラダーのヨーの向きとエルロンによるロールの向きの2種類の安定性がある。
ヨーは先にも述べたが縦の安定性と良く似ていて重力を考えなくていいので、簡単にいえば風見鶏が風に対して常に頭を向ける原理である。垂直尾翼や胴体があることで風圧の中心が重心より後ろにあれば機種は自然と風上を向く。飛行機の場合は飛んでいる進行方向と風のベクトルを合わせた向きが風上である。したがって横風があれば、機体の進行方向からそれに応じて横に首を振って飛ぶことになる。

ロール方向の安定性は少し複雑である。高翼機は重心よりも高い位置に主翼があるため自然とロール方向の安定性が高い。重心が揚力の中心よりも低いためほっておいても重心が全体の揚力の真下に来るように安定する。低翼機はこの安定性が期待できないので上反角か後退翼で安定性を確保する。

Photo_6

ロールしたときは揚力の向きも斜めに働くので横方向の成分を持ち横滑りが生じる。上反角があるとこの横滑りにより下に傾いた翼の方は下から風が当たり、反対側は上から風が当たるため下側の方が揚力が大きくなり水平を取り戻す。

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後退翼の場合は横滑りの影響が翼の前縁に対して当たる角度の差になって現れるので、滑った方の翼では風がより翼に対しまっすぐあたり反対側ではより斜めに当たるので翼の有効面積に差が出て滑った方の翼の揚力が大きくなる。
ロール方向の安定性は、傾くことにより、横方向に滑ることを利用して左右の翼の揚力に差を起こさせているので、直接的でなく、まるで手品のようであるが、実際に有効である。

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ハリアーでは、上反角でなく下側に反らせているが、高翼機で後退角でもあるこの機体は戦闘機としては横の安定性が良すぎるので下側に主翼を下げて全体としての安定性を適正な値にしているのである。



尾輪式と前輪式
昔の飛行機はほとんどが尾輪式であった。

Nakajima_ki43_hayabusa_peregrine_fa

重たいエンジンが前についているので、重心が前寄りになり、主脚を前に付けて、尾輪は後ろに小さいのを付けた方が構造的に合理的であった。

Img_1072

今は小型のプロペラ機も前輪式であるが、昔の飛行機と比べるとエンジンも小さい割に出力が上がり、プロいペラも小さくなったので小さな前輪であ済むが、昔の機体では、前輪式にすると、前輪はプロペラが地面に当たらないようにかなり大きくかつ大きなエンジンを避けて付けなければならなかったので、性能を重視する戦闘機では、車輪を比較的小さくできる尾輪式になるのは当然であった。尾輪式では、尾輪に掛かる力は小さな力しか働かないので極端な話、隼の試作機のようにそりでもよかった。
しかし前輪式では、重いエンジンの近くなのでそれなりに丈夫に作る必要がある。


機体の構造的には都合が良かった尾輪式ではあるが、離着陸や滑走時は前輪式と比べて操縦上の問題が出てくる。

まず機首が上がっているので、パイロットは、尻尾が上がるまでは前方の視界が悪い、というかまん前が見えない。ラジコンの場合は、関係ないが、零戦などでは風防を空けて座席を上に上げて少しでも前方の視界を確保したそうである。
離陸するには、まず後ろを上げて、機体を水平にし空気抵抗を減らして加速をしてから離陸しなければならない。ラジコンでこれをやらなくてもモーターのパワーが強いので加速はできるがずに機首が上を向いたまま離陸させると、地面効果を離れてすぐに失速して墜落ということになりかねない。まあ、パワーがあるので強引に加速して何とか傾きながら離陸というのは模型では前輪式を含めて良くあるが、この離陸では人のいる方向180度に離陸させてはいけない。

尾輪式では、最初は機首が上を向いているのに進行方向は水平なので、プロペラの左右で風に対するピッチが異なり、通常の前を向いての時計回転のプロペラでは右側の方がピッチが大きくなって左右で推力の不平衡が発生する。これに前輪式でも発生するプロペラが回転することによる反動による反時計回りの力を受けるので、離陸の時に左に向かって離陸しがちになるくせがいっそう複雑になる。ラダーとスロットルの操作を慎重に行う必要がある。
また、重心のすぐ前の主輪が前側になるので、前輪式と違って前のめりになり易く、またグランウンドループ言われる重心が主輪を追い越してくるっと180度反回転する現象も起きやすい。これは河原の飛行場のような抵抗が大きい路面では起きにくいが、逆に着陸時には前にでんぐり返しし易くなる。したがって尾輪式では、地上滑走時はエレベーターを目一杯アップを引いてお尻を地面に押し付けるようにした方が前のめりになりくく安全である。

結局尾輪式の離陸では、エレベーターを目一杯引いた状態で、なめらかに、前のめりにならないよう、また方向が左にずれないようラダーを細かく使って加速しながらエレベーターをゆっくり戻し、お尻を上げて水平に戻し、必要ならそのまま滑走して速度を付けてからゆっくり離陸するのが基本である。
もちろん、コンポ号のオリジナルなファンフライト機のような場合は、尾輪式と言っても主輪が重心より結構前についているのでスケール機よりは、はるかに簡単に浮き上がる。ラダーの微妙な操作もそれほど必要としないが、機体を一旦水平にしてから加速する練習はできる。

着陸は、速度をできるだけ落とし、機首を上げて着陸するか、路面が良い場合は、速度をそれほど落とさなくても接戦着陸で着陸後徐々に速度を落とせば前のめりしにくくなる。いずれにしろ尾輪が地面に着いたらエレベーターを上げてお尻を地面に押すようにして前にでんぐり返しするのを予防した方が良い。小さな石ころでも引っ掛かってでんぐり返しし易い。
フラップも地上滑走するのなら着陸後速度が落ちたら早めに畳んで、速度が間違って出ても浮き上がりにくした方が安全かもしれない。まあその効果はともかく本物らしくはなる。

尾輪式に比べると前輪式は楽である。エンジンが後方にあるジェット機はもちろんのこと、戦後の民間機はほとんど前輪式である。
とはいえ手持ちの7機の機体のうち、脚のないグライダー2機を除くとまだ飛ばしていない隼を含めて現役5機すべて尾輪式である。退役になったバルサゼロも当然尾輪式である。したがって前輪式が本当に離着陸しやすいかは実は未経験である。

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